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弧度と三角関数の極限1 ∼ 弧度法

三角関数の極限、
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を導出するのに、多くの本は下のような図において、

三角形 OAB の面積 < 扇形 OAB の面積 < 三角形 OAC の面積

という大小関係を使う。
高校生の時、これがどうしても気持ち悪かった。どうして気持ちが悪いのかも分からなかったし、数式も正しいので納得しようと努力したが、取ってつけたような、ごまかされたような感覚がまとわりついて、困った。
本当のところ、扇形(あるいは円)の面積は、上記の三角関数の極限を使って導出するので、扇形の面積を使って三角関数の極限を出すのは、論理的におかしい。
納得できないのは、当然だ。
高校生の自分に対して、納得できるような答えを示したいが、できるだろうか。
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初めに弧度法(ラジアン)での角度を定義する。

ラジアンをはじめて教わったとき、また新しい単位か、とうんざりした。平方メートルにアール、立方メートルにリットル等々を思い出したんだ。
でも角度をラジアンにすると、例えば、ネイピア数 e と円周率 π との間には、e^{iπ} = - 1 というシンプルな関係が成り立つ。(オイラーの公式でθ = π とおく。Euler’s Formula の章を参照。)
また、今から導出しようとしている極限も、角度がラジアンのとき 1 になる。
だから、角度をラジアンで表現することは、人間の都合ではなく、自然界において無理のないやり方なんだと思う。

微積分の世界では、なめらかで連続な曲線の長さについて考えるとき、その曲線を無限に分割し、その分割された曲線ひとつひとつの弦の長さの和を、曲線の長さであるとする。
そこで、円周の長さを、その円を無限に分割した扇形の弦の長さの和であるとしよう。
弧 AB に対する弦は直線 AB である。

円を分割した扇形のうち、あるひとつの扇形 OAB について考える。
三角形 OAB は二等辺三角形であり、OA と OB は円の半径である。
半径が r 倍になると、三角形は相似なので、弦も r 倍になる。弦の長さの和が円周だから、半径が r 倍になると、円周も r 倍になる。
したがって円の半径(あるいは直径)と円周の長さは比例する。

円の直径と円周の比は、紀元前から学者たちが計算してきたが、どうしてもキリのよい数にならず、無理数になってしまう。
円周は直径の 3.14159265358979 · · · 倍 = π 倍 である。
ネイピア数 e = 2.71828 · · · と同様に、自然界の不思議としか言いようがない。

半径 1 の円の円周は 2π である。

この円を、中心 O を通る直線で半分にすると、半円の弧の長さも半分の π となる。
円を 1/4 にすると、扇形の内角も 1/4 、弧の長さも 1/4 で 2π/4 = π/2 となり、
1/8 にすると、扇形の内角も 1/8 、弧の長さも 1/8 で 2π/8 = π/4 となり、......。
扇形の内角の大きさと弧の長さが比例することから、角の大きさを、半径 1 の扇形の弧の長さで表現する。

これが弧度法、ラジアンである。

オイラーも『オイラーの無限解析』(高橋正仁訳、海鳴社)で、角度 zラジアンのことを『(半径 1 の扇形の)弧 z 』と書いている。

(つづく)


by mtbkaoru | 2017-07-28 11:00 | 数学
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