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ベッポとぼく


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「長いあいだ一人でものを考えていると、結局のところ一人ぶんの考え方しかできなくなるんだということが、ぼくにもわかってきた。」
「ひとりぼっちでいるというのは、雨降りの夕方に、大きな河の河口に立って、たくさんの水が海に流れこんでいくのをいつまでも眺めているときのような気持ちだ。」
「あなたは、それがどんな話であっても、深いところでそのまま受け入れることができる人だって」
   (村上春樹『スプートニクの恋人』講談社文庫 より)


この本を読んでいて、この感覚に覚えがあるな、と思った。
ミヒャエル・エンデの『モモ』だ。
村上春樹とエンデを結びつけるのって、少数派だろうね。


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ひとあしすすんではひと呼吸し、ひと呼吸ついては、ほうきでひとはき。
ときどきちょっと足をとめて、まえのほうをぼんやりながめながら、もの思いにふけります。
   (ミヒャエル・エンデ『モモ』岩波書店 より)

こうしてゆっくり進んでいく、道路掃除夫ベッポ。
モモはベッポがだいすきで、彼の言ったことをぜんぶ、だいじに心の中にしまっていた。
このふたりの呼吸と、『スプートニク』のぼくとすみれのそれが似ているような気がする。


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ぼくはすみれを迎えにいく。
「わたしの言うこと理解できてる?」
「できてると思う」
「ここに迎えにきて」
しかしぼくは急がない。もうとくに急ぐ必要はないのだ。ぼくには準備ができている。ぼくはどこにでも行くことができる。
   (『スプートニクの恋人』より)

モモは空をとんで、ベッポのところへ帰っていく。



by mtbkaoru | 2017-05-03 18:57 |
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